ビートルズは何を差し置いても常に完璧、常に最高、常に最先端だったワケではない。最高じゃなかったのはそれこそHold Me TightやTell Me What You Seeを聴けばすぐに解るし、明らかに他に遅れをとっていた分野もある。例えば1965年というのは、ビートルズが必ずしも一番格好良いとは感じられていなかった年だと思うのだ。
この年はフーやスモール・フェイシズがモッズ・ムーブメントを牽引していた年。ロンドン出身のスタイリッシュなモッズ達は、同じロンドンの粗野なストーンズとも全然違ったし、ましてやリバプールの田舎者が付け焼き刃的なスーツを着ているより遥かに格好良かった筈だ(実際にはフーも付け焼き刃だったのかも知れないけど・・・)。彼らはソウルやR&B、時にはジャズの影響を感じさせる「モダンな」ロックをやっていた。
そして、この年にポール(一番流行に敏感だった男。それは少年時代の「モテるため」と地続きの筈だ)が黒っぽいベースラインを追求しだしたのは偶然ではないと思う。この時代、明らかにロンドンでは黒っぽい方が格好良かった。
よくRubber Soulはフォーキーなアルバムと言われるし、確かにそういう一面はあるけど、俺は「ビートルズがモッズに影響を受けたアルバム」と捉えている。モッズにもフォーキーな一面(スティーヴ・マリオット←ティム・ハーディン)もあったし、それよりやはり、ソウルフルだったりファンキーだったりする瞬間が多く耳に出来るからだ。それはDrive My Carや(シングルだけど)Day Tripper, I'm Looking Through YouやYou Won't See Me、それからGreen Onionsの失敗作みたいなインスト12 Bar Original(未発表→アンソロジー2に収録)にも感じることが出来る(ポールの曲が多いのは偶然じゃない筈)けど、やっぱり一番モッドなビートルズナンバーはこの曲だ。
先述の12 Bar Originalもそうだけど、モッズがハモンドでやるところを何故かハーモニウムとか使っちゃうのがビートルズ流。でもビートルズがやるとそれはそれでソウルフルに響いちゃうから面白い(逆にMr. MoonlightのハモンドなんかVoxみたいなチープな音にしている)。あの間奏のほぼ全音符のフレーズ、アレをハモンドで、グリッサンドとか交えてやったらそれだけでモッドになると思わない?
勿論リズムもファンキー。特にリンゴとポールはそれまでに無くハネてるし、イントロの瞬間ピアノもそれだけでグルーヴィー。あとはレノンにドスの効いた声で歌わせとけば完璧だ。ビートルズ(特に初期)にはジョン・レノンという反則技的に声が良すぎるシンガーがいたのがあまりにも強みだ。ずるい。まあ、スティーヴ・マリオットも違うベクトルで反則級だけど。
そんなワケで、この曲は俺のオールタイム・フェイヴァリット。そういえばRubber Soulのステレオミックスで、何故かこの曲だけ妙にバランスの良いミックスになってるのが物凄く嬉しかったな。俺、ひいきされてる。