2009年10月4日日曜日

Don't Bother Me


 ジョージの処女作ということで、まあはっきり言ってたいした出来ではない。アルバムに収録されたのは「折角ジョージが書いたから」程度の理由だろう。次回作You Know What To Doの時は流石にもう「ご祝儀」は無かった。

 個人的には好きな曲なんだけどね。マイナー調のメロディとクールでハードな感じのするサウンド。既に所謂「ジョージらしさ」の片鱗は見えていて、Art of Dyingあたりに通じて行く雰囲気もある。

 で、その「クールな感じ」なんだけど、最近いくつかのカヴァーヴァージョンを聴いて気付いた。所謂「スパイ系」のサウンドを感じるのだ。そう、モッズ好みな感じの。あ、そうか、コレって要するに「ギタリストが書いた曲」なのかもね。エレキインストに歌をつけた様な、そういう感じなのかも知れない。

 最初に思い浮かんだのがMontrose AvenueのShe's Looking For MeそれからMOONCHILDのESCAPE。あとはスカパラのいくつかの曲(フィルムメイカーズ・ブリードとか)。あとヴェンチャーズ。カヴァーでは明らかにその辺を狙った風の音で出来ているものもあって、なるほど!と膝を叩いた。

 まあ、オリジナルはやっぱりああいうモンだけどね〜(笑)

Baby You're A Rich Man

 この曲で使われているキーボード、Clavioline以前は結構謎の存在だった様だ。俺が初期に読んだ本では「クラヴァイオリン」と音訳されていて、「鍵盤で演奏する弦楽器」として紹介されていた。「クラヴィア+ヴァイオリン」から付いた名前の様なことが書いてあって、要するにハーディガーディの様な楽器だと思われていた様だ。言われてみればそんな感じの音色にも聴こえるのが面白い。

 正しくは「クラヴィオライン」で、初期のストリングシンセ的な楽器だったらしい。色んな楽器の音色を真似ることが出来る、と紹介されているけど、実際このチャルメラみたいな音色以外にどんな音が入っていたのか、俺は知らない。まあシミュレートと言えるレベルの音色じゃなかったんじゃないかな。時代だしね。メロトロンと同じ頃でしょ。

 ビートルズ以外でこの楽器を使ってる人も知らないけど、同じ様な音色をあえてビートルズっぽく使う、という例はいくつかある。YMOのLotus Love, ピチカート・ファイヴのMagic Carpet Rideを聴いた時は「あ!あの音!」って思ったし、ワリとそれだけで(あとビートの雰囲気もあるけど)ビートルズっぽいって感じちゃう、まあそれだけ印象的に使われてる音色だってことだよね。マイナーな曲なのにね。

Revolution 9

 子供の頃、従弟が買って来たホワイトアルバムをはじめて聴いた。当時ウチには叔母の部屋(同居してるんだ)にしかまともなレコードプレイヤーが無かったので、そこで夕方から聴きはじめた。二人で夢中で聴いているうちに薄暗くなって来るのだけど、レコードに夢中で電気をつけるのを忘れている。そんなタイミングでこの曲を聴いたのが最初だった。
 小学生〜中学生くらいのガキにはただでさえ敷居の高いこの曲。それをそんなシチュエーションで。もう俺と従弟の印象の中にはただひたすら「怖い曲」として残ってしまった。コレはもう完全にトラウマ。払拭出来たのは22歳頃じゃなかっただろうか。

 その頃試しに研究心(当時音楽学校で知り合った仲間の影響もあり)で、馬鹿なりに分析する様な耳で聴いていたら徐々に面白くなって来た。ジョージの声も入ってることに気付いたのもこの頃だったかな。
 その後も香月利一の本で「全歌詞」が掲載されては再確認、マーク・ルーイスンの本を読みながら再確認、など、まあコレを聴くのはやっぱり「研究」的な要素が強かった。

 最近は意外に「音楽」として聴いている。不快だったエイフェックス・ツインのシングルや、スプーキー・トゥース&ピエール・アンリのアルバムなんかに比べれば遥かに聴きやすく、ある意味ポップでさえある実験音楽だということに気付いたからだ。「実験音楽」って言葉に酔っちゃってるレベルだよね。ちょっと微笑ましい。でもその分聴きやすい(比較レベルでね)。

 ところで何故か「レヴォリューション・ナンバーナイン」って呼ぶ人が多いけど「レヴォリューション・ナイン」だからな。

2009年10月3日土曜日

Glass Onion

 誰かが何かの本か雑誌で書いてたけど、確かにこのイントロのドラムは「リンゴ登場!」って感じだ。リマスターで聴いて更にそう感じた様な気がするんだけど、やっぱりあの2打で「ポール、お前のドラムもまだまだだな」って言ってるように聴こえる。

 多分The Wordくらいから、Rain〜Strawberry Fields・・・と来て、この曲やこの後のDon't Let Me Downなど、所謂「ブリティッシュ・ロックのビート」を決定づけたのがリンゴのドラム。勿論同時代のトラフィックだとかストーンズ、まあジミー・ミラー系(笑)の音もそうなんだけど、やっぱり90年代以降のブリットポップ勢に影響を与えたのはどうしたってリンゴのグルーヴだろう。ミュートしまくったデッド極まりない音(顕著なのはHey Judeだけど)はあんまりみんな真似しないみたいだけど。リンゴは平気でタオルの上から叩くからなぁ。

 レノンが小ネタを紛れ込ませまくっているのは今更だけど、Fool On The Hill, Lady Madonna, Fixing A Holeなど、ポールの曲がやたらに多いのは気のせいじゃない筈だ。自分の曲をネタにしてさえWalrus is Paulだし。純粋にレノンネタはStrawberry Fieldsくらいか。まあ当然、それなりに悪意もこもってるんだろうけど、そこで平然とリコーダー吹いちゃうあたりが物凄くポールらしい。

2009年9月26日土曜日

Something

 結構みんなそういうけど、ジョージ本人が圧倒的に言うんだけど、この曲後半のポールのベースが気に入らない、と。やり過ぎだ、って言うんだけど俺はやっぱり大好きなんだけども。聴き馴染んでるせいかなぁ。でも俺、メロディアスなベースラインって好きなんだよね。でもそのメロディアスなベースラインが好きなのは当然と言うかポールのせいなのであって。要するにポールのベースが好きなんだけど。

 アンソロジー3に入ってるジョージのデモには、完成版でのギターソロの部分に歌が入っている。歌詞まで出来ていてカットしたのには理由があるんだろうけど、この中間部分を良く聴くと、基本的にあのギターソロが元々作曲されていた歌メロを基本にして出来ているということが解る。つまり、あのソロは(ほぼ)作曲されたフレーズ、メロディラインだったワケだ。

 そう考えるとジョージがポールのベースに批判的なのも納得が行く。あの曲は、特にメロディは完全に作曲されたものであり、それは楽曲全編にわたってジョージによって構築され尽くしたものなワケだ。つまり、ポールに「余計なメロディを付け加えるんじゃねえよ」って言いたいワケなんだね。俺の曲だ、お前の「作曲」したフレーズはいらない、と。
 アウトテイクを聴くと、レノンがエンディングで延々、後のRememberになったフレーズをピアノで弾き続けるジャムセッションになってるんだけど、この部分は勿論冗長で、カットされて当然でもあるんだけど、やっぱりこれも「レノンが作ったもの」でありジョージにとっては不要のものだったんだろう。

 それだけジョージはこの時期、自分の曲に自信があったんだろう。それがそのままAll Things Must Passに繋がって行く。凄い。

 でも俺はやっぱり、ポールのベースが好き。

2009年9月25日金曜日

The Word

 ビートルズは何を差し置いても常に完璧、常に最高、常に最先端だったワケではない。最高じゃなかったのはそれこそHold Me TightやTell Me What You Seeを聴けばすぐに解るし、明らかに他に遅れをとっていた分野もある。例えば1965年というのは、ビートルズが必ずしも一番格好良いとは感じられていなかった年だと思うのだ。

 この年はフーやスモール・フェイシズがモッズ・ムーブメントを牽引していた年。ロンドン出身のスタイリッシュなモッズ達は、同じロンドンの粗野なストーンズとも全然違ったし、ましてやリバプールの田舎者が付け焼き刃的なスーツを着ているより遥かに格好良かった筈だ(実際にはフーも付け焼き刃だったのかも知れないけど・・・)。彼らはソウルやR&B、時にはジャズの影響を感じさせる「モダンな」ロックをやっていた。

 そして、この年にポール(一番流行に敏感だった男。それは少年時代の「モテるため」と地続きの筈だ)が黒っぽいベースラインを追求しだしたのは偶然ではないと思う。この時代、明らかにロンドンでは黒っぽい方が格好良かった。

 よくRubber Soulはフォーキーなアルバムと言われるし、確かにそういう一面はあるけど、俺は「ビートルズがモッズに影響を受けたアルバム」と捉えている。モッズにもフォーキーな一面(スティーヴ・マリオット←ティム・ハーディン)もあったし、それよりやはり、ソウルフルだったりファンキーだったりする瞬間が多く耳に出来るからだ。それはDrive My Carや(シングルだけど)Day Tripper, I'm Looking Through YouやYou Won't See Me、それからGreen Onionsの失敗作みたいなインスト12 Bar Original(未発表→アンソロジー2に収録)にも感じることが出来る(ポールの曲が多いのは偶然じゃない筈)けど、やっぱり一番モッドなビートルズナンバーはこの曲だ。

 先述の12 Bar Originalもそうだけど、モッズがハモンドでやるところを何故かハーモニウムとか使っちゃうのがビートルズ流。でもビートルズがやるとそれはそれでソウルフルに響いちゃうから面白い(逆にMr. MoonlightのハモンドなんかVoxみたいなチープな音にしている)。あの間奏のほぼ全音符のフレーズ、アレをハモンドで、グリッサンドとか交えてやったらそれだけでモッドになると思わない?
 勿論リズムもファンキー。特にリンゴとポールはそれまでに無くハネてるし、イントロの瞬間ピアノもそれだけでグルーヴィー。あとはレノンにドスの効いた声で歌わせとけば完璧だ。ビートルズ(特に初期)にはジョン・レノンという反則技的に声が良すぎるシンガーがいたのがあまりにも強みだ。ずるい。まあ、スティーヴ・マリオットも違うベクトルで反則級だけど。

 そんなワケで、この曲は俺のオールタイム・フェイヴァリット。そういえばRubber Soulのステレオミックスで、何故かこの曲だけ妙にバランスの良いミックスになってるのが物凄く嬉しかったな。俺、ひいきされてる。

2009年9月24日木曜日

Hold Me Tight

 この曲はビートルズの曲でも特にショボい。演奏もヘボだし、ポールのヴォーカルはうわずっちゃってるし、曲としてもまあ、埋め草レベルだ。

 まあはっきり言っていい部分を探す方が困難な曲なのだけど、あるとき、何となくBCWで演奏してみた。そしたら、なんとこの曲妙に楽しい。ある程度確かな技術で演奏してみると、実はこの曲、パワーポップに分類されるべき曲だということが判明したのだ。

 そこで思い出す。トッドがカヴァーしてたじゃないか。聴き返すとなるほどパワーポップだ。もうちょっとハードロック的な音圧でやってれば見事にハマったと思う。実際に俺のイメージにハマったのはむしろスミザリーンズのヴァージョン。いや、もうちょっと乱雑でいいんだ。バッドフィンガーがやってたら似合ったと思うのだけど。

 そこまで思ってからビートルズに戻ると、やっぱり全然良くない。でも結局「ヴォーカルが悪い」という結論になりそうだ。ドラムはいいし、ってーか「乱雑でパワーポップ的」な演奏に一番近いのは結構ビートルズだったりすることにも気付いてしまう。それでもやっぱり、あのうわずったヴォーカルはどうしてもいただけねえな。

2009年9月23日水曜日

Yesterday

 いつも俺はこの曲について「ビートルズで200番目くらいに好きだ」と言っている。順番からして多分Hold Me TightやP.S. I Love Youの上、Tell Me What You Seeの少し下くらいじゃないだろうか。よく言われる「213曲」がPepperやRevolutionの別ヴァージョンを含むかどうか、という記憶があやふやだし、順位は日替わりなので「211番目」と断言することは出来ない。

 これもいつも言っているが、強調しておきたいのは「200番目くらいに好き」だということだ。「10番目くらいに嫌い」では断じて無い。はっきり言おう。俺はYesterdayが好きだ。

 今回リマスターで、特にオリジナルステレオミックスを聴いていてしみじみ「良い曲だなぁ」と思った。やっぱりメロディとアレンジが完璧にハマっていて、こういうのが理屈と違うレベルでハマっちゃうときのポールは凄い。逆に考えちゃうと失笑方面へ行く(特にソロで多い)のだけど、この曲はハマっちゃった良い例。それこそHold Me TightやP.S. I Love Youではこうは行かない(特に考えてもいないだろうけど、ハマってもいない)。そういう意味で言えば勿論Tell Me What You SeeやAnother Girlなんかより遥かに上なんだけど、それはアートとしての話。俺の好みで言うとやっぱり、その辺のポジション。

 Yesterdayに限らずポールのバラードはカヴァーが非常に多いんだけど、誰がやっても「バラードである」という意識でやるから甘くなる。ところがポールは実は基本的には「バラード=ロック」という意識の人であり、しかも「基本的に人でなし」という人格の問題が重なって、バラードが絶対甘くならない。この曲にしても実にクールだ。テンポも実は速いし。どこか他人事っぽい情感なのだ(だからEleanor Rigbyみたいな物語歌がハマるのね)。
 実は同じ日に録音したI've Just Seen A Faceと結構近いんじゃないだろうか。速いテンポでアコギ弾きながら淡々と歌うって意味で。

I Saw Her Standing There

 また別の1曲目。

 赤盤に飽き足らなくなってから徐々に従弟と分担してアルバムを揃えたから、この曲に出会う順番としてはベツに1曲目でもなんでもない。俺が最初に買ったのはSgt. Pepper、従弟は確かFor SaleかMagical Mystery Tourだったからこの曲は比較的後だったと思う。ただラジオや、良く見ていたアニメビートルズで出会っていた可能性はあるけど。

 でも他のビートルズの曲に比べて「1曲目」というイメージがことさらに強いのは多分あのカウントのせいに違いない。アレはきっと俺の耳に「ザ・ビートルズ始まるよ!」という意味に聴こえているのだ。

 マニア的に聴くと非常に恵まれた曲で、デビュー直前のライヴが2テイク、ホームデモ、スタジオセッションがテイク1〜12まで全て、それから数々のライヴヴァージョン(公式にも2ヴァージョン)、それからポールのソロだけでなくレノンやジョージによるライヴまでもが世に出ていて、聴き比べる楽しさがある。

 でも不思議と一番はつらつとしてるのが公式テイクなんだよなぁ。ヘタなライヴよりライヴっぽいのは事実上スタジオライヴなんだから当然かもだけど、もしかしたら勝手知ったるステージよりレコーディングスタジオの方が新鮮味、喜びがあったのかも知れない。それが音に出てるのかもね。
 
 この曲のスピード感は実はアタマ、カウントの後に半拍喰ってスタートするからなんだよ、という話を何かで読んで目から鱗。アレはギターだけど、この曲やるときにギタリストが喰わない場合は必ずあの半拍をスネアかバスドラで入れることにしている。ゴーストノート的に入れるだけでも結構効果があるんだよな。

 あとこの曲、レコードでは全然バスドラが聴こえないんだけど、ライヴではバシバシ入っている。ポイントはギターソロ中盤でかなり意図的にアクセントとして入れてるところ。アレを入れるとエラい格好良くなるので絶対真似したい。

Love Me Do

 結局この曲なのだ。そりゃあ今聴けば、楽曲としてのレベルはイマイチだし、演奏だってショボいっちゃあ、ショボい。名曲ではないよね。

 でも、俺にとってはやっぱりコレから始まった。ビートルズが結局コレから始まったのと同じで、俺もコレから始まったというのは幸福なのかも知れない。

 ビートルズにとっては勿論記念すべきデビューシングル。俺にとっては赤盤の1曲目。従弟の家の車で赤盤のカセットを聴いて、そこから全てが始まった。俺は11歳だった筈だ。

 Love Me Doが衝撃だったのか、赤盤が衝撃だったのか。でも最初の頃はとにかくこの曲〜She Loves Youまでの4曲が大好きで、まあ子供の脳味噌に最初の4曲しか入り切らなかっただけかも知れないけど、それでもやっぱり、特別だったんだよね、あの頃は。

 シングルヴァージョンはリマスターで聴いても所詮は板起こしでこもりまくってるねぇ。この曲だけは一生音は良くならないんだろうな。それに比べてあるバムヴァージョンのクリアなこと。その分アンディ・ホワイトに分が良く聴こえてしまうけど。それにリンゴのタンバリンも入ってるから音が厚いし。あとポールが慣れて来てる。絶対二度目のセッションでもう一度リンゴに叩かせてたら少なくともこれと同じくらいには良かったと思うんだ。